2022年10月
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沿岸と海洋の生態系の回復へ大規模な手法採用を オーストラリア

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)と同国のジェームスクック大学 (JCU) は新しい研究を開始し、オーストラリアの沿岸と海洋の生態系を回復させるために、大規模かつ調整された新しい手法を採用することを呼び掛けている。8月12日付け発表。

(提供:CSIRO)

研究チームは、気候変動の圧力が高まっているため、劣化し、失われた沿岸生態系を全国規模で修復できなければ、あまりにも危険が大きすぎると語る。

「景観規模で調整された沿岸海洋生態系の修復のためのロードマップ (A Roadmap for Coordinated Landscape-scale Coastal and Marine Ecosystem Restoration)」が発表された。これはオーストラリア政府の国家環境科学プログラムが資金を提供するものであり、科学者、ファーストネイションズ(先住民族)、政府機関、および非政府機関を含む170人以上の協力者からの情報が含まれている。

共同主執筆者であるJCU TropWATER のネイサン・ウォルサム (Nathan Waltham) 准教授は、プロジェクト同士が調整されていないのは大きな問題であるとしたうえで、「私たちは修復に多くのお金と時間を投資しています。修復した場所で結果が見え始めるまでには 10 年以上かかるため、修復プロジェクトはまず開始することが重要です」と話した。

CSIRO のメーガン・サンダース (Megan Saunders) 博士と共同筆頭著者は、生態系の修復は、気候変動を緩和し、変動に適応するための最も重要な活動の1つであると言い、「オーストラリアはすでに非常に多くの自然資本を失っています。例えば過去 200 年間にカキ礁の92%、タスマニアの広い昆布棚の 95%、一部の河口にある塩性湿地の最大80%が失われました」と述べた。

「ブルーカーボン」沿岸生態系は、炭素を貯蔵し、沿岸の危険から海岸線を保護する源となる。CSIRO 主導の調査によると、全国の沿岸海洋生態系の45%がすでに温暖化によるストレスを経験しており、その影響は気候変動と相まって悪化すると予測されている。

「これらの生態系の衰退により地球は壊滅に向かっています。この損害を緊急かつ大規模に修復することが必要です」とサンダース博士は話した。

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