2022年11月
トップ  > 大洋州科学技術ニュース> 2022年11月

新型コロナの治療薬候補12種を特定―既存の薬剤のデータベース化で オーストラリア

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の研究者らは、他の病気の治療薬として承認済みの7817種類の薬剤をデータベース化し、そこから新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に有効な治療薬の候補を特定したことを発表した。科学誌 nature india が10月27日に伝え、研究成果は学術誌 International Jounal of Molecular Sciences に掲載された。

ワクチンによって、COVID-19の重症度と死亡率が大幅に低下した一方で、ウイルスの新たな変異体への対応が求められている。CSIROのCOVID-19に関するプロジェクトリーダーであるセシャドリ・バサン(Seshadri Vasan)氏はインドのビルラ科学技術研究所(BITS) とオーストラリアのモナシュ大学 からなる国際研究チームを率いて、既存の薬剤からCOVID-19に対する治療薬候補の特定を行った。

研究チームはオーストラリアのグリフィス大学内にあるCompounds Australia Open Drug Collectionから選ばれた薬剤候補となる7817種類の化合物でデータベースを構築した。その中から安全で効果的な医薬品に必要な評価を目的とした8つのフィルターを用いて、214種類の医薬品候補分子を絞り込んだ。さらに、そこからCOVID-19治療に使用できる可能性がある12種類の化合物を特定した。これらの分子はすでに米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けたものだ。

今後は臨床試験や細胞実験を通じて新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)とその変異体に対する、それらの化合物の有効性の評価を行う。今回研究に活用したデータベースはオンラインのオープンデータベース「CoViRX」として公開されている。バサン氏は「COVID-19に対応する有望な戦略は、他の病気に対してすでに承認されている薬剤を再利用することです」と話している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る