オーストラリア研究会議励起子科学分野のセンター・オブ・エクセレンス(ARC Centre of Excellence in Exciton Science)は、同センターの研究者らが、ダイヤモンドの窒素空孔(nitrogen-vacancy:NV)中心とプラズモンを生じるナノ粒子との相互作用を説明し予測するための一般理論を初めて構築したと発表した。研究成果は学術誌 Nanophotonics に掲載された。
(提供:ARC Centre of Excellence in Exciton Science)
NV中心はダイヤモンド内にできる欠陥の一種で、量子を用いた幅広い実験に有用である。磁場・電場や歪み、温度に非常に高い感度を示すことからナノスケールの分解能を持つセンサーとして利用でき、脳イメージング等さまざまな分野への応用が期待されている。
しかし、NV中心の効果はNV中心の光輝度と収集効率(collection efficiency)により制限される。金属ナノ粒子の電子振動(プラズモン)を用いることでNV中心の輝度と効率性を高めることができるが、NV中心とプラズモン構造との相互作用の大部分は解明されていなかった。
筆頭著者であるロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)のハリニ・ハプアラチ(Harini Hapuarachchi)博士は「NV中心はナノスケールの世界への窓となる。私たちはその輝度とコントラストを高めることを目標としている」と語った。また、RMITのジャレド・コール(Jared Cole)教授は「この理論によって多くの新たな実験が促進され、技術的応用が改善されると考えている」と述べた。
2022年12月8日付け発表
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部