オーストラリアのロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)は3月22日、同大学とイタリア・米国の科学者による国際共同研究チームが、曲げられるディスプレイやデバイスの電子部品として利用できる可能性のある、「インク化できる(inkable)」酸化亜鉛のナノ材料を開発していることを公表した。同チームが酸化亜鉛ナノ結晶の製造戦略、能力、可能性のある用途について総説した論文は学術誌Chemical Reviewsに発表された。
酸化亜鉛は半導体業界で長年にわたり研究されてきた材料であるが、近年のナノテクノロジーの進歩によって、携帯電話やコンピューターを含むさまざまな技術に利用できるとして注目されている。
この酸化亜鉛ナノ結晶は、インク状にしてジェット印刷やエアブラシ塗装のようなプロセスで基板にコーティングし、非常に薄い膜を形成できる。「これらのコーティングは、タッチスクリーンディスプレイに必要な2つの特性である、可視光への高い透過性と高い導電性を備えることができる」と、研究を率いるRMITのエンリコ・デラ・ガスペラ(Enrico Della Gaspera)准教授は語る。
このナノ結晶は低温での成膜が可能であり、プラスチック等の柔軟性のある基板をコーティングできる。また、曲げられる電子機器以外にも、自浄作用を持つコーティング、抗菌・ 抗カビ剤、紫外線センサー等のさまざまな用途に活用できる可能性がある。
チームは今後、産業パートナーと連携してこのコーティング技術の用途を探索することを計画している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部