オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は4月26日、水素製造に必要なエネルギーと製造コストを大幅に削減する画期的技術の商用化を目指していることを明らかにした。

グリーン水素の製造においては、水の電気分解(電解)に大量の電気を要することが課題となっている。グルプリート・カウル(Gurpreet Kaur)博士のチームは、この課題の解決に向け、固体酸化物電解(solid oxide electrolysis: SOE)技術を用いて蒸気から水素や合成ガスを製造する方法を開発した。この技術は水素製造に必要な電気のほぼ3分の1を、低コストの熱や工業工程で発生する廃熱で置き換えることを可能にする。

このプロジェクトは産業界から大きな関心を集めており、複数の企業や大学との共同開発と規模拡大に向けた資金として、豪州再生可能エネルギー機関(Australian Renewable Energy Agency)から250万豪ドルの助成を受けた。さらに、Science and Industry Endowment Fund(SIEF)から170万豪ドルを授与され、豪州の大手鉄鋼メーカーであるブルースコープ・スチール(BlueScope Steel)等の産業パートナーから支援を得ている。

プロジェクトの商用化を率いるアンドリュー・ジョーンズ(Andrew Jones)氏は、「この技術は「水素と合成ガス(H₂/CO)は付加価値の高い多くの化学品や燃料の原料となるため、鋼鉄、アンモニア、石油化学製品、メタノール、大型輸送等のさまざまな産業分野で活用できる可能性がある」と語った。

CSIROは現在、新たにスピンアウトした企業を通じてこの技術の商用化を進めている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部