オーストラリアのメルボルン大学(University of Melbourne)は4月19日、同国が、国内経済および輸出経済において排出量ネットゼロを達成するための方法を探索した最終モデリングの結果を発表した。同大学と豪クイーンズランド大学(University of Queensland)、米プリンストン大学(Princeton University)、国際経営コンサルティング企業Nous Groupの共同プロジェクト「Net Zero Australia」の成果となる。
この結果によると、2050年までにネットゼロを達成するには、国家電力市場(National Electricity Market、豪州東部・南部を管轄する電力卸売市場)の発電容量を3倍にする大幅な電力供給能力の拡大が必要である。これには風力・太陽光、送電網、蓄電、電気自動車(EV)、ヒートポンプ等の技術を急速に展開する必要がある。また輸出の脱炭素化に向けては、石炭と液化天然ガス(LNG)の輸出品を水素等のクリーンなコモディティで置き換えることが求められる。
メルボルン大学のマイケル・ブレア(Michael Brear)教授は、「送電網と蓄電の大規模な拡大に基づく再生可能エネルギーと電化がネットゼロへの鍵となる」と指摘。そのうえで、原子力については「我々のモデルでは、コストが大幅に(現在の国際的なベストプラクティスに基づく価格の30%程度まで)低下し、再エネの成長が制約されない限りは原子力エネルギーの出番はないであろうことが示された」と話した。
同プロジェクトでは引き続き、ネットゼロへの移行に向けた準備(mobilisation)を進める方法を研究するという。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部