2023年10月
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AI時代に「忘れられる権利」を守るには 豪CSIRO

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は9月11日、ChatGPT等の人工知能(AI)モデルの利用拡大に伴い生じている「忘れられる権利(right to be forgotten: RTBF)」に関連し、懸念を受けた新たな技術の開発の現状を公表した。

(出典:CSIRO)

RTBFは、欧州連合(EU)をはじめとする一部の国々で、オンラインのプライバシー権における重要な要素とみなされている。

しかし、ChatGPT等の大規模言語モデル(LLM)にRTBFを適用することは、検索エンジンの場合と比較しても非常に難しいと、マシン・アンラーニング(machine unlearning: AIに学習データを忘れさせる技術)に関する論文を共著者として発表したCSIROのチエリ・ラコトアリベロ(Thierry Rakotoarivelo)氏は語る。そのうえで「LLMには特定の個人データや文書を保存する能力はないため、特定の情報だけを取り出したり忘れたりすることはできない」と説明する。

現在、さまざまなマシン・アンラーニング手法が研究されているが、この技術は非常に複雑であり、いずれの手法にも課題がある。CSIROのサイバーセキュリティ研究者デービッド・チャン(David Zhang)氏らは、まずモデルに応急処置的な修正を施し、その間に修正方法の開発や修正されたデータセットを用いた新たなモデルの訓練を行う手法を提案している。

CSIROは、説明可能なAIや責任あるAI等のAIに関する倫理原則を新技術の開発に導入することは、データプライバシーに関するこうした問題の調査や回避に役立つ可能性があると指摘した。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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