2023年10月
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薬剤耐性菌の形態変化の解明へ、画期的なイメージング技術を研究 豪UTS

オーストラリア・シドニー工科大学(UTS)のビル・ゼーダーシュトレーム(Bill Söderström)博士が、薬剤耐性菌感染症の治療法の開発に役立つ可能性がある、画期的なイメージング技術を研究し、注目を集めている。UTS が9月20日付で発表した。

薬剤耐性菌が引き起こす感染症は、毎年推定500万人を死に至らせている。特に尿路感染症(UTI)の主要な原因である尿路病原性大腸菌(UPEC)は、抗菌薬への耐性を急速に獲得している。

UTSの豪州微生物学・感染症研究所(Australian Institute for Microbiology and Infection)微生物超解像顕微鏡研究室(Microbial Super-Resolution Microscopy Lab)を率いるゼーダーシュトレーム博士は、先進的なイメージング技術を用いて、これらの細菌の細胞の形態が感染に及ぼす影響や、細胞が「形態変化(shape-shifting)」を経て人間の免疫機構を欺く仕組みを研究している。

同博士は「細胞がどのように棒状(rod)から糸状(filament)へと遷移するかと、これらの状態が分子スケールでどのように異なるかを明らかにすることを研究目標としている。これらの形態遷移は感染を持続させるうえで極めて重要であるため、阻止する方法を明らかにしたい」と語る。

同博士は沖縄科学技術大学院大学(OIST)構造細胞生物学ユニットの博士研究員として、細菌を垂直位置でイメージングする技術を開発した経歴を持つ。UTSではオーストラリア研究会議(ARC)による中堅研究者向けのフェローシップ制度「未来フェローシップ(Future Fellowship)」の2023年の受給者に選出された3名の研究者の1人。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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