2023年11月
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ASKAP電波望遠鏡で史上最も遠い高速電波バーストを検出 オーストラリア

オーストラリアのシドニー大学(University of Sydney)は、同大学の研究者を含む国際共同研究チームが、これまで観測された中で最も遠く、最も高エネルギーな「高速電波バースト(fast radio burst:FRB)」を検出したことを公表した。10月20日付。この発見について報告した論文は学術誌Scienceに発表された。

高速電波バースト(FRB)が発生した遠方の銀河から地球までの経路(イメージ図、縮尺通りではない)
© ESO/M.Kornmesser (出典:シドニー大学)

「FRB 20220610A」と名付けられたこのFRBは、2022年6月に、西オーストラリア州に設置されたオーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)のASKAP電波望遠鏡を用いて観測された。

論文の筆頭著者であるマッコーリー大学(Macquarie University)のスチュアート・ライダー(Stuart Ryder)博士は、「ASKAPを用いてバーストがどこから来たのかを突き止めた。その後ヨーロッパ南天天文台(European Southern Observatory)の超大型望遠鏡(Very Large Telescope)を用いて発生源の銀河を調べたところ、これまで発見されたFRB発生源のうち最も古く最も遠方に位置し、合体している少数の銀河の集まりの中にあることがわかった」と語る。

このFRBの距離は同チームによるこれまでの記録を50%上回るものであった。さらにこのFRBは観測史上最も高エネルギーであり、1秒よりもはるかに短い時間に、太陽の30年間の総放出量に相当するエネルギーを放出していた。

さらに、今回の発見観測結果は、遠距離のFRBを用いて銀河間の「失われた(missing)」物質の量を測定し、宇宙の質量を推定するための手掛かりも与えている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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