2023年12月
トップ  > 大洋州科学技術ニュース> 2023年12月

アップコンバージョンに関する70年代の理論を最先端の技術で改良 豪州

オーストラリアのロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)を拠点とする同センターの研究者が、磁場とアップコンバージョン(upconversion)に関する1970年代の理論を、最新の分析技術や量子力学の理解に基づき改良した。オーストラリア研究会議励起子科学分野のセンター・オブ・エクセレンス(ARC Centre of Excellence in Exciton Science)が11月9日付で発表。研究成果は学術誌Journal of Chemical Theory and Computationに掲載された。

(出典:ARC Centre of Excellence in Exciton Science)

アップコンバージョンは、低エネルギーの2つの光子を合わせて高エネルギーの光子を生み出す過程である。アトキンス(Atkins)とエバンス(Evans)は1975年に、アップコンバージョンが発光溶液中で起こり、結果として生じる光の明るさが磁場の強さに依存する仕組みを説明する画期的な理論を発表した。近年、太陽光発電や光電子工学の分野でアップコンバージョンプロセスの開発が進むなか、この理論の重要性がさらに高まっている。

RMITの博士課程学生ロスリン・フォーキャスト(Roslyn Forecast)氏が率いるチームは今回、この理論を再検討し、電子スピン共鳴分光法などの最先端技術により研究が可能になった「光学的暗状態(optically-dark states)」に関する洞察を新たに取り入れた。

フォーキャスト氏は「大きな影響をもたらしたアトキンスとエバンスの理論を、現代の人々により利用しやすくなるよう再構築した」と語った。

最新の手法に基づき過去の理論を再構築するフォーキャスト氏らの取り組みは、太陽光エネルギーや照明技術の進歩に向けた道を開いている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る