豪州のロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)の研究者らが、豪州の最新の医療状況に基づく「潜在的に不適切な薬物(potentially inappropriate medicine:PIM)」のリストを作成した。2月5日付発表。
PIMとは、リスクが利益を上回る可能性のある薬を指す。重度の有害事象や薬物相互作用、転倒・死亡などのリスク上昇を引き起こす危険性が高く、特に複数の薬剤を併用することの多い高齢者に対しては、慎重に使用する必要がある。
豪州の既存のPIMリストは15年前に作成されたものであり、同国の最新の状況を反映したものではなかった。「他国のリストは、薬剤の入手可能性や処方の傾向、診療ガイドライン、医療制度などの違いにより、豪州には部分的にしか適用できないことがわかった。さらに、これまでの豪州のリストでは、より安全な可能性のある代替薬を推奨していなかった」と、研究を率いたケイト・ワン(Kate Wang)博士は語る。
ワン博士らは、老年医学、総合診療、薬学、臨床薬理学、疫学などを専門とする33名の臨床医や研究者の意見に基づき、16の薬剤または薬剤クラスをPIMとしてリストに記載し、代替薬も提案した。
「このリストは65歳以上の人々を診療する医療従事者のほか、これらの薬剤のリスクや代替薬に関心のある研究者や政策立案者、消費者も利用できる」とワン博士は語る。一方で、「リストに記載された全ての薬剤は、適切に利用すれば臨床的利益をもたらすということを念頭に置く必要がある」とし、定期的かつ個別化された薬物療法の見直しに代わるものはないと強調した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部