オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は4月29日、天然ガス貯蔵サービスを手掛ける豪州の企業ロカード・エナジー(Lochard Energy)による、既存ガス田を利用した水素の地下貯蔵に関する研究に同機構が協力していることを伝えた。
ビクトリア州にあるCSIROの地下エネルギー研究所の地下水素研究者達
水素は、太陽光や風力など間欠性のある再生可能エネルギーの安定化(firm)に利用できる可能性がある。すなわち、系統に再生可能エネルギーの供給が豊富にあるときにその電力を用いて水素を製造して貯蔵し、電力が不足したときにその水素を用いて発電することができる。蓄電池を用いる方法よりも長期間にわたる安定化が可能であるが、数カ月単位や季節単位での安定化には、大量の水素を安全かつ効率的に貯蔵する方法が必要となる。
ビクトリア州のロカード・エナジー社
© Lochard Energy
(出典:いずれもCSIRO)
ビクトリア州で既存のガス田を利用した天然ガス貯蔵施設を運営するロカード・エナジー社は、CSIROと連携し、同様の既存ガス田を水素の地下貯蔵に利用できる可能性を調査している。この「H2RESTORE」プロジェクトに対し、同社はオーストラリア再生可能エネルギー庁(ARENA)から200万豪ドルの助成金を授与されている。
CSIROはこれらのガス田の、地表から1,400~1,800メートルの深さにある砂岩層における水素の挙動に関する技術的解析を支援している。この研究は主に次の4つの要素からなる。
この調査が成功した場合、ロカード・エナジー社は、パイロットプラントでの実証を行い、最終的には系統と連携した商用の水素製造・貯蔵プラントを構築することを目指している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部