オーストラリアのシドニー大学(University of Sydney)は5月14日、2050年までの温室効果ガス(GHG)排出量ネットゼロという世界的な目標の達成を支援する研究組織「Net Zero Institute」を立ち上げたことを発表した。
この組織は、同大学の研究者による草の根的な取り組み「Net Zero Initiative」を前身として成長し、現在では150名以上の研究者で構成される。政府や産業界、地域社会と連携し、廃棄物からの重要鉱物の抽出、GHGの除去、医療部門のネットゼロ、グリーンなコンピューティング等、さまざまな分野の課題解決に取り組む。
各部門の主要な専門家で構成される科学諮問委員会には、金融大手HSBCや三菱重工、韓国ヒョンデ(Hyundai)などの専門家が参加している。
Net Zero Institute所長のディアナ・ダレッサンドロ(Deanna D'Alessandro)教授
Image: Stefanie Zingsheim, University of Sydney
(提供:シドニー大学)
同組織を率いる工学部(Faculty of Engineering)のディアナ・ダレッサンドロ(Deanna D'Alessandro)教授は「気候変動は社会のあらゆる側面に組み込まれており、あらゆる面からの対策を必要とする。例えばコンピューティングは、最初は紙の使用を削減する技術として歓迎されたが、今では電子廃棄物(e-waste)やデータセンターによる大量のエネルギー消費の問題を抱えている」と語った。
こうした課題に関して、同大学のチャン・シュー(Chang Xu)准教授らは、ハードウェアの電力消費を少なくする効率的なアルゴリズムの開発に取り組んでいる。
同大学はQS世界大学ランキングの「サステナビリティ」部門で豪州トップ、世界7位にランクインし、キャンパスの電力をすべて再生可能エネルギーで賄っている。「Net Zero Institute」の設立は、同大学の持続可能性に向けたこうした取り組みをさらに前進させるものとなる。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部