2024年06月
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リチウムイオン電池の安全なリサイクル施設運用開始 豪CSIRO «動画あり»

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は5月23日、同機構の研究者らが、リチウムイオン電池(LIB)のより安全なリサイクルに向け、オーストラリアで初めての、乾式破砕(dry shredding)法を用いたリサイクルのパイロット施設を運用していることを発表した。

使用後にリサイクルされるリチウムイオン電池(LIB)の割合は、2021年時点で豪州では10%、世界では5%にとどまっている。使用済みLIBが正しく処分されない場合、有害物質による環境汚染や健康被害のリスクが生じ、高価値な原料が無駄にされることとなる。

豪州では毎年約3300トンのリチウムイオン電池廃棄物が発生している
© Nick Pitsas
(出典:CSIRO)

LIBのリサイクルにおける最初のステップは回収した電池を細かく破砕することであるが、この工程には、発火や爆発に伴う安全上の懸念や不明点が未だに残されている。CSIROのトマス・リューサー(Thomas Ruether)博士らが研究する、不活性ガスを用いた乾式破砕は、従来の水溶液を用いた湿式破砕(wet shredding)よりもこうしたリスクを軽減でき、高価値な材料をより多く回収できる。

リューサー博士らは、ビクトリア州クレイトンにあるCSIROの施設内で、不活性ガスである窒素ガス(N2)を用いたLIBの安全な乾式破砕を行うパイロットプラントの試運転を行っている。このプラントは1バッチ最大10キログラムのLIBを処理できる豪州で初めての施設であり、光学カメラや赤外線カメラを用いて、乾式破砕のプロセスを詳細にモニタリングする。さらに、特許出願中のプロセスを用いて、電解質のリチウム塩を、新たなバッテリー製造プロセスに使用可能な純粋な結晶として回収する。

リューサー博士は、「乾式破砕中に起こっていることに関するこれらのデータは、我々の研究だけでなく、深刻な安全上の懸念や材料の完全性(materials integrity)に関する不明点に取り組んでいる世界中のバッテリーリサイクル業界にとって、非常に重要である」と述べている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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