2024年07月
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植物育種のスキル不足が食料安全保障に深刻な影響 豪CSIRO

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は6月11日、ニュージーランドのリンカーン大学(Lincoln University)とカナダのマギル大学(McGill University)との共同研究により、植物育種(plant breeding)の専門家不足が世界の食料安全保障に深刻な影響をもたらす可能性があると発表した。この研究の成果をまとめた論文は学術誌Crop Scienceに掲載された。

植物育種家は作物の長期的な成功に重要な役割を果たしている
(出典:CSIRO)

植物育種は世界の食料や飼料、燃料、繊維の生産を支えている学問である。今回の研究は、現状の農業食品・繊維・飼料生産の水準を維持するには、スキル不足に緊急に対処する必要があると指摘した。

筆頭著者であるCSIROの科学者ルーシー・イーガン(Lucy Egan)博士は、「現在、高いスキルを有する植物育種専門家の世代が引退の年齢に差し掛かっている一方で、植物学を専攻する大学院生は分子生物学など他の分野を選んでおり、ギャップが生じている。この不足がもたらす結果は深刻であり、豪州を含む世界の国々の食料安全保障や経済に影響する」と述べている。

この論文では、スキル不足への対応として、官民連携によるアプローチの必要性を強調しながら、いくつかの対策を提案している。

共著者の1人であるマギル大学のバレリオ・オヨス-ビレガス(Valerio Hoyos-Villegas)博士は、対処に向けた鍵の1つは、各国に専門の研修施設を設立することであると述べ、「この部門の科学技術的進歩についていくには、大学院での植物育種学のプログラムや、民間部門の関与を増やすことにさらなる重点を置く必要もある」と語った。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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