2024年09月
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海洋予測プロジェクト「Bluelink」の20年の成果 豪CSIRO・気象局・国防省

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は7月31日、同機構とオーストラリア気象局(Bureau of Meteorology)、オーストラリア国防省(Australian Government Defence)が20年以上にわたって実施している海洋予測プロジェクト「Bluelink」の成果を紹介した。

Bluelinkは、海洋の状態をよりよく理解し予測することを目的とした共同プロジェクトであり、地方の海岸から領域ごとの海流や波、全球規模の海洋循環まで、さまざまなレベルの予測を行っている。

アルゴフロートは、海洋状況に関するほぼリアルタイムの情報を得るために、年間を通して海中の観測データを収集する
(出典:CSIRO)

海洋予測は、海洋観測や海洋モデリング、データ同化、高性能コンピューティングといった技術の進化により、2000年代前半に可能になった。Bluelinkチームはアルゴ(Argo)フロートや衛星、センサーを搭載した係留系(moorings)・船・ロボットグライダーなどから収集したデータと上記のような最先端の技術を駆使して、海洋循環に関する詳細な推定値を導き出している。

さらに「Bluelink ReANalysis(BRAN)」では、過去の海洋の状態の再解析(hindcast)も行っている。BRANのデータは、異常海象の解析、海洋のプロセスや変動性の研究、観測システムの効果の評価など、さまざまな研究で活用されている。

Bluelinkが提供する海洋データや予測情報は、海軍艦船の安全保護や戦術的優位性の確保、石油・ガスの海洋掘削装置の設計、海洋漂流物(maritime debris)の検出、漁業など、海に関するさまざまな活動で重要な役割を果たしてきた。

Bluelinkは進化を続けており、今後は、より現実に近いモデルの構築に役立つ知見を提供できると期待されている。機械学習やドローン、そして米航空宇宙局(NASA)らが2022年に打ち上げたSurface Water and Ocean Topography(SWOT)衛星などの新たな技術も、予測精度の向上につながっている。

こうした継続的な取り組みの成果が評価され、Bluelinkは、オーストラリア博物館(Australian Museum)の「Eureka Prizes」で、「豪州の安全保障における優れた科学(Outstanding Science in Safeguarding Australia)」カテゴリのファイナリストに選ばれている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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