オーストラリアのロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)は9月19日、9月1日に適用開始となった豪政府の「政府におけるAIの責任ある使用のための方針(policy for the responsible use of AI)」に対する同大学の研究者らの見解を公表した。
同大学のCentre for Industrial AI Research & Innovation (CIARI)は、AI研究者や業界のソートリーダーから収集した見解に基づき、この方針の強みや複雑性、実装に関する洞察をまとめた。その概要は以下の通り。
専門家らは、世界の一部地域のようにこの技術を抑圧するのではなく、AIのイノベーションと安全かつ倫理的な方法での成長を促進するこの方針に対し、概ね好意的であった。しかし一方で、この方針の実装方法や倫理的な使用に及ぼす影響については疑念を抱いていた。政府がこの方針を運用モデルに組み込む方法や、指針や制限に従うよう人々を参加させる方法、各部門でのAI導入を先導する適切な人物の選定が重要となる。
方針の技術レベルの実装にあたっては、さまざまな複雑な問題が生じると予想されている。CIARIのAI産業諮問委員会(Industry Advisory Board for AI)の委員長を務めるディーレン・ベル(Dheeren Velu)氏は、確実な実装には、大手テクノロジーコンサルティング企業やサプライヤーとの関係構築が不可欠であると強調している。
今後はテクノロジー企業だけでなく、あらゆる部門や業界のワーカーにAI関連のスキルが求められるようになる。しかし、スキルアップにおいて「AIの基礎」とすべき内容や、テクノロジーの進化に応じた生涯にわたる学習システムの構築方法については疑問が提起されている。
この方針の運用化には各組織が関与するため、組織間の一貫性も考慮する必要がある。豪州の非営利団体ユナイティング(Uniting)のデジタルイノベーションリード(Digital Innovation Lead)ラメシュ・ラガバン(Ramesh Raghavan)氏は「各組織はこれについて孤立して考えることはできない。エコシステム内で他組織と関与する役割を担っている」と、組織間で連携して取り組むことの重要性を強調している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部