オーストラリアのシドニー大学(University of Sydney)は10月9日、化石燃料の使用量の増加により、地球が気候危機において予測不可能な新たな段階に突入しつつあると警告する、最新の報告書の見解を伝えた。この報告書は米オレゴン州立大学(Oregon State University)の研究者らが率い、シドニー大学理学部(Faculty of Science)の研究者も参加した国際共同研究チームが執筆し、学術誌Bioscienceに発表されている。
山火事イメージ
(出典:シドニー大学)
地球の「危機的な」将来を警告するこの報告書は、現在の政策は、世界の気温上昇を1.5℃までに抑えるというパリ協定の約束が破られ、2100年までに2.7℃上昇する方向へと進んでいく状況を放置していると指摘している。
この報告書で述べられた重要な知見には以下が含まれる。
化石燃料の使用量は増え続けており、2023年には年間消費量が1.5%増加している。再生可能エネルギーの使用量も増加しているが、いまだに化石燃料使用量の14分の1に過ぎず、化石燃料を代替しつつあるとはいえない。さらに、家畜の放牧や森林破壊など、他の要因による気候への負荷も増大している。
2024年11月11~22日に予定されている国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)の開催を前に、著者らは、政府に対し、気候変動が引き起こす損害を軽減するための行動に全力で取り組むよう呼び掛け、こうした行動の例として、化石燃料から再生可能エネルギーへの移行、生物多様性に富んだ生態系の回復、持続可能で環境に配慮した経済の推進、廃棄物や過剰消費の削減などを挙げている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部