2025年02月
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量子コンピューターによる機械学習で迅速かつ正確なデータ解析を実証 豪CSIRO

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は1月29日、同機構の量子科学者3名から成る研究チームが、量子コンピューティングの利用により、大量のデータを用いる複雑な問題解決を大幅に改善できる可能性を示したと発表した。この研究の成果をまとめた論文は学術誌Advanced Scienceに掲載されている。

研究チームは、「重ね合わせ」や「もつれ」といった量子コンピューティング特有の性質を利用して、従来のコンピューターでは不可能なスピード、正確さ、効率性で大規模データセットを圧縮し、分析できることを示した。

CSIROの量子科学者で論文の最終著者(senior author)であるムハマド・ウスマン(Muhammad Usman)博士は、量子コンピューターを用いた機械学習(量子機械学習)が、大規模データセットを、重要な細部を失うことなく簡素化できることを実証できたと語る。

同博士は、「我々の研究はケーススタディとして地下水モニタリングに焦点を当てたが、量子機械学習は、大規模データセットの迅速で詳細な分析を必要とするあらゆる分野に幅広く応用できる。量子の途方もない計算能力を機械学習に統合すれば、産業や実世界の多くの問題の解決に変革的な影響がもたらされるだろう」と述べている。

同博士はさらに、量子機械学習の実社会への応用について、「例えば、交通渋滞や有害な排出を軽減するための交通路の最適化や、医療画像の正確な分析を通じた迅速で信頼性の高い診断といった方法で変革をもたらす可能性がある」と語った。

従来の機械学習と量子機械学習の違いを示す図
(出典:CSIRO)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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