2025年02月
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人間のデジタルツイン、医療・スポーツ・労働安全などで活用の可能性 豪CSIRO

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は1月30日、人間のデジタルツインを作成する技術が、さまざまな分野で活用され始めていることを伝えた。

現実世界のものを仮想空間に複製するデジタルツイン技術は、既に分子からインフラ設備、さらには惑星全体にいたるまで、あらゆるもののシミュレーションに活用されている。最近では個々の人物のデジタルツイン("デジタルドッペルゲンガー")を作成することも可能になっている。

人間のデジタルツインの有望な用途には以下のようなものがある。

  • デジタル患者: デジタルの人体モデルに生体情報を追加して現実世界の患者をリアルタイムで複製した「デジタル患者」は、個別化医療や遠隔医療、仮想的な臨床試験などに利用できる可能性がある。
  • デジタルアスリート: スポーツ科学では、ウェアラブルセンサーなどの技術を活用して作成したアスリートのデジタルモデルを、トレーニングやコンディション管理、競技のシミュレーションなどに活用する試みが広がっている。
  • デジタルワーカー: CSIROでは、オフィスや建設現場などのさまざまな職場環境における従業員を仮想上でシミュレーションする技術を開発している。この技術は動作やワークフロー、生産性を分析し、労働災害を防ぐ目的で活用されている。

デジタルドッペルゲンガーは労働災害の防止に役立つ
(出典:CSIRO)

一方で、この技術にはリスクも伴う。人間のデジタルツインを作成するには、映像や音声、生体情報を含む個人データの収集が必要であり、著作権の侵害やディープフェイク、個人情報窃盗、オンライン詐欺といった問題の発生につながる可能性がある。私たちがデジタルツインと幸せに共存する未来を実現するには、政府や技術開発者、エンドユーザーが、同意の取得、倫理的なデータ管理、悪用の可能性といった問題について真剣に考える必要がある。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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