オーストラリアのロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)は、は4月10日、電子機器や建設、自動車用途向けに石油代替となるバイオオイルを、下水処理残渣(バイオソリッド)から安価かつ持続可能に製造する技術「PYROCO(TM)」の研究成果を発表した。研究成果は学術誌Renewable Energyに掲載された。
PYROCO(TM)は、酸素を使わず高温でバイオソリッドを熱分解し、炭素を豊富に含むバイオ炭を生成する。この物質はフェノールを多く含むバイオオイルを製造するための触媒として機能するもので、RMITがビクトリア州所有の上下水道事業者であるサウスイーストウォーターなどと数年にわたり共同で技術開発し、現在普及段階にあるという。
今回、RMITがCSIRインド石油研究所と行った最新の研究では、バイオ炭が、バイオオイル生産における高価な従来触媒の代替となる可能性を実証した。実験では、フェノール69%、炭化水素14%を含むバイオオイルを生成することに成功した。このオイルはさまざまな産業で使用される樹脂、潤滑剤、添加剤などの貴重な化学物質の製造に不可欠なフェノールを豊富に含むため、持続可能なサプライチェーンを支えることができると考えられている。
研究を主導するカルピット・シャー(Kalpit Shah)教授は、「この新触媒は、商業化が可能な規模に近づいています。オーストラリアの飲料水ガイドラインでも許容量が制限されているポリフルオロアルキル化合物 (PFAS)を含むバイオソリッドをPFASフリーのバイオ炭に変換することで、埋立処分を防ぐことができます。バイオ炭市場は来年までに33億豪ドル規模に達すると予想されており、循環型のソリューションになることが示されています」と述べた。
RMITと連携先のアクアメトロ(Aqua Metro)社やサウスイーストウォーターなどは、政府から300万豪ドルの支援を受け、2026年に商業規模の実証プラントを建設予定である。サウスイーストウォーターのララ・オルセン(Lara Olsen)社長は、「バイオソリッド中のPFASを99.99%除去できる革新的技術であり、環境保全に資するものです。このプロジェクトは、環境保護のためのイノベーションを推進するという当社のビジョンを反映しています」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部