2025年05月
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卓越した南極研究で2名の研究者がオーストラリア科学アカデミー栄誉賞を受賞

オーストラリア科学アカデミー(Australian Academy of Science)は4月11日、南極の自然科学と保全の分野で2人の著名な研究者が、2025年の科学アカデミー栄誉賞を受賞したと発表した。

スティーブン・チャウン(Steven Chown) 教授:モナシュ大学(Monash University)

科学アカデミーのフェロー。生物科学の優れた研究が認められ、スザンヌ・コリー・メダル(Suzanne Cory Medal)を授与。南極での30年以上にわたるフィールド経験を持ち、生物多様性の変動を理解し、環境変化の影響を緩和するための保全戦略に多大な貢献をしてきた。

生理学的変異の大規模なパターンとその生態学的意味合いに関する研究を行うマクロ生理学の分野を共同開発。この研究により、外来種は在来種より生理学的耐性が高く、気候変動において有利に働く可能性があることを明らかにした。

また、同教授の研究は、南極条約協議締約国による政策立案に直接反映され、船舶や航空機、観光客に起因した種の移動を減らすためのプロトコルに反映された。さらに、2016~2021年まで南極研究科学委員会の会長として、環境や科学政策に関する重要な科学的助言を行った。

リンダ・アームブレヒト(Linda Armbrecht)博士:タスマニア大学(University of Tasmania)

地球科学への卓越した貢献により、ドロシー・ヒル・メダル(Dorothy Hill Medal)を授与。海底堆積物に保存された古代のDNA(sedaDNA)を抽出し、分析する技術を開拓。

同博士の研究は、過去の海洋生態系、特に化石として記録が残らない生物の理解における重大なギャップに取り組んでいる。博士のチームの画期的な研究により、南極海のsedaDNAの記録は少なくとも100万年前まで遡ることができるようになった。

この研究は、過去の気候変動に対する極域の食物網を形成するプランクトンやオキアミのようなキーストーン種の進化や適応に関する重要な洞察を提供し、将来の気候変動に対する南極生態系の応答を知る重要な手がかりを与えた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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