オーストラリアのモナシュ大学(Monash University)は4月16日、同大准教授のジェレミー・バー(Jeremy Barr)博士が、学術誌を通して、微生物学の理解を革命的に発展させたT系バクテリオファージ研究の軌跡を振り返ったと発表した。この論文は学術誌Nature Microbiologyに掲載された。
バー博士は、大学院で始めた廃水処理システムの高密度バイオフィルムの形成に関する研究をしている時に、細菌に感染するバクテリオファージが、実験の崩壊の原因であることを見出した。この偶然の発見は、バー博士が何十年にもわたって微生物学の分野を形作ってきたT系バクテリオファージに魅了されるきっかけとなった。
1940年代にマックス・デルブリュック(Max Delbrück)によって導入されたT系バクテリオファージは、生命を研究するための還元主義的なモデルとして見なされてきた。バー博士は、「デルブリュックのビジョンは、小さな管理可能なシステムを用いて、根本的な生物学的原理を解明することでした」と説明した。これらの7つのファージは、大腸菌(Escherichia coli)にのみ感染し、分子遺伝学やバイオテクノロジーにおける数え切れないブレークスルーを生み出す基盤となった。
バー博士はポスドク時代、粘膜表面におけるファージの役割を研究するためのモデルファージを探し、研究室の冷凍庫から、デルブリュックのT系ファージの1つであるØT4を見つけた。バー博士は、「それは偶然の選択でしたが、本当に幸運でした」と回想する。ØT4は、バー博士らが粘液へのファージの付着モデルを確立するのに役立ち、ファージが粘膜表面の細菌のコロニー形成をどのように減らすことができるかを示した。バー博士は、これらのウイルスの50年前のストックを継承し、T系ファージの旅を続けた。古い株と新しい株の遺伝的比較では、驚くべき安定性を示し、付着モデルの持続的な価値を裏付けた。
バー博士は今後の微生物学について、T系ファージの存在は不可欠だが、従来のモデルを超える研究の必要性を強調する。自然界には数兆個のウイルスが存在しており、研究者は新しい生態系と微生物の相互作用を探求している。バー博士は、「次世代の科学者は、ファージに関する私たちの知識を再定義する発見をもたらすでしょう」と述べて、今後の研究に期待している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部