オーストラリアのモナシュ大学は4月30日、肥料生産における「グリーン」なブレークスルーについて注意を促す研究結果を発表した。研究成果は学術誌Jouleに掲載された。
化学学部のマッティア・ベロッティ(Mattia Belotti)博士、アレクサンドル・シモノフ(Alexandr Simonov)准教授、ダグ・マクファーレン(Doug MacFarlane)教授が主導した本研究は、窒素ガス、水、再生可能エネルギーのみで硝酸塩肥料を生成する「直接窒素酸化プロセス」に焦点を当て、これに関する既存研究を批判的にレビューしている。
直接窒素酸化プロセスは、従来のハーバー・ボッシュ法やオストワルド法に代わる持続可能な方法として期待されているが、既存研究には欠陥があり、結果が誇張されている可能性があるという。特に、窒素の酸化によって生成されたとされる硝酸塩が、不純物やバックグラウンドソースに由来する場合がある。シモノフ准教授は「クリーンで直接的な硝酸態肥料の生成は、持続可能な農業にとって大きな前進ですが、発表された結果の多くは精査に耐えない可能性があります」と述べた。研究者らは電気化学的および光化学的窒素酸化に関する多くの研究を分析し、実験コントロールの不足が誤解を生んでいるケースを明らかにした。
また、同位体標識という検証手法は信頼性が高いものの、コストがかかり、すべての研究で利用できるわけではないと指摘している。そのため、研究チームは、実用的かつ低コストで再現性を確保するための新たな推奨枠組みを提案している。
シモノフ准教授は「研究者が初めから正確に実施できるよう支援することで、革新を促進したい」と述べ、ベロッティ博士は「科学の進展には慎重で計画的な取り組みが不可欠です」と強調している。
直接窒素酸化が実現すれば、よりクリーンで低炭素な硝酸塩肥料の生産が可能となるが、現状を現実的に捉え、必要な改良を進めることが重要だろう。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部