オーストラリアのシドニー大学(University of Sydney)は5月1日、同大学ビジネススクールの研究者が環境保護への投資が経済成長に寄与することを示し、持続可能な投資を推進するよう呼びかけていることを伝えた。
(出典:シドニー大学)
シドニー大学ビジネススクールのシドニー・ホライズン・フェローであるダニエル・ケント(Danielle Kent)博士は、神経科学や人道支援プログラム、政府政策の分野で豊富な経験を持つ金融専門家であり、現在は行動ファイナンスの研究に取り組んでいる。心理学と経済理論を組み合わせたこの研究は、産業界や政策立案者が経済を強化する手法を見つけるために役立てられている。
同博士は「取締役会は効率性に関心を持つ一方で、持続可能性への支援には躊躇しています。それはCO2削減が事業の中核と見なされていないためです」と述べ、持続可能な投資が企業の成長に繋がることを示すための研究を推進している。
また、同博士の調査によると顧客は大手企業が持続可能性の主導権を握ることを期待しており、環境保護への取り組みが企業にとっても投資収益をもたらす可能性が高いとし、「ポジティブな投資コミュニケーションが経験豊富な投資専門家にも影響を与えたことは意外でした」と述べ、太陽光発電への投資を倉庫運営コスト削減の一例として挙げた。
同博士はニューサウスウェールズ州の小さな町で育ち、地域経済が農業収益に依存している現状を身をもって経験している。気候変動による自然災害が農家に与える打撃についても危機感を持っており、「持続可能な社会を次世代に残すためには、今すぐ行動を起こすべきです」と強調している。
また、これまでの研究成果として、世界銀行のプロジェクトやニューサウスウェールズ州政府での政策支援を通じて、持続可能な投資が地域社会の発展に寄与することを示してきた。現在はシドニー大学ビジネススクールのネットゼロ研究所で、技術革新と政策支援の両面から気候変動対策を推進している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部