2025年06月
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感情コントロールで慢性痛軽減、効果的な治療法開発 豪ニューサウスウェールズ大学

オーストラリアのニューサウスウェールズ大学(UNSW)は5月1日、UNSWとUNSW神経科学研究所(NeuRA)の研究チームがeヘルス介入Pain and Emotion Therapyが慢性痛軽減に効果的な治療法であることを発表した。研究成果は学術誌JAMA Network Openに掲載された。

この治療法は、慢性痛に悩む人々がネガティブな感情をコントロールし、ポジティブな感情を引き出すことを目的としており、脳が感情をより容易に制御できるように再訓練する形で構成されている。

2023年3月から2024年9月にかけて実施された試験には、89名の慢性痛患者が参加。参加者はビデオ会議による8回のセラピスト主導のグループセッションに加え、専用アプリとハンドブックを活用した自主学習を通じて、感情の調整スキルを身につけた。6カ月間の追跡調査で、治療を受けたグループでは、感情調整能力が改善しただけでなく、痛みの強さが100点満点中10点分軽減されたと報告された。

研究を主導したシルビア・ガスティン(Sylvia Gustin)教授は「今回の試験では、感情制御スキルを活用することで、痛みの強度を軽減し、うつ病、不安、睡眠障害など、他のいくつかの要因を改善できることが分かりました」と語った。ネル・ノーマン=ノット(Nell Norman-Nott)博士は「私たちのオンライン治療は自宅からアクセス可能で、移動に困難を抱える患者にも届きやすい設計となっています」と述べた。

今後は2026年に政府支援による大規模臨床試験が予定されており、さらなる有効性と実用化に向けた研究が進められる見込みである。「これまでに得られた結果は慢性的な痛みに対する理解を大きく前進させ、身体と感情の両方を一緒に治療することがいかに重要かを示しています」とガスティン教授は語った。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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