2025年08月
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コバルト系触媒の劣化要因を解明、グリーン水素技術への道拓く 豪モナシュ大学

オーストラリアのモナシュ大学(Monash University)は7月17日、グリーン水素製造に用いるコバルト系触媒の劣化メカニズムを明らかにし、より安価かつ持続可能な水素技術への道を拓いたと発表した。研究成果は学術誌Nature Energyに掲載された。

再生可能エネルギー由来のグリーン水素は、脱炭素社会の実現に向けた有望な手段とされるが、現行の水素製造技術では、希少で高価なイリジウムが不可欠となっている。特にプロトン交換膜(PEM)型の水電解装置ではイリジウムを用いた触媒が主流であり、世界的な普及には供給量の限界が課題とされている。

この問題に対し、モナシュ大学化学学部の研究チームは、イリジウムの代替として注目されるコバルト系材料の安定化に取り組んだ。同大学のアレクサンドル・N・シモノフ(Alexandr N. Simonov)准教授は「グリーン水素の大量生産には、希少資源に依存しない触媒が不可欠です」と述べている。

研究は、ドイツのマックス・プランク化学エネルギー変換研究所、オーストラリアのスウィンバーン工科大学、米国のロスアラモス国立研究所など国内外の機関と共同で実施された。3年以上にわたる解析の結果、触媒としての活性と材料の劣化が実は独立して進行することを初めて実証した。従来は両者が不可分と考えられていたが、本研究により、性能と耐久性を分けて設計できる可能性が示された。

研究に参加したスウィンバーン工科大学のロザリー・ホッキング(Rosalie Hocking)准教授は「この発見は、経済的かつ実用的な水素触媒の開発に大きく貢献します。同じ手法を用いれば、他の材料にも応用できるでしょう」と語った。

本研究は、モナシュ大学、オーストラリア研究会議、再生可能エネルギー庁(ARENA)、ドイツ連邦教育研究省(BMBF)などの支援を受けて実施された。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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