オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は7月29日、オーストラリアエネルギー市場運営者(AEMO)と共同で2024~2025年度の最終GenCost報告書を発表し、再生可能エネルギーが引き続き最も低コストで、小型モジュール炉(SMR)が最も高コストであることを示した。

資本コスト(capital costs)の年間変化率と電力の平準化コスト(LCOE)の推移
(出典:CSIRO)
GenCost報告書は、電力システムのモデリングや計画を支援するため、新規建設の発電技術に関する資本コストや運転コストの予測をまとめたもので、CSIROが毎年改訂している。今回の結果では、風力や太陽光発電に蓄電・送電を組み合わせた再生可能エネルギーが最も低コストとなり、次いで二酸化炭素回収・貯留(CCS)を伴うガス、大規模原子力が続いた。ただし、これらは国内未導入のため、着工までの期間や初期費用の増加が予想される。
一方、カナダのダーリントン計画による最新データを反映しても、SMRは依然として最も高コストであり、従来のGenCost予測範囲内に収まった。CSIROエネルギー部門ディレクターのディートマー・トゥールビエ(Dietmar Tourbier)博士は「GenCostは最新の市場状況を反映した透明性の高い独立した見積もりであり、エネルギー転換の判断材料となります」と述べた。
今回の改訂では、太陽光発電や蓄電池の価格は下落傾向にある一方、多くの技術でコスト見積もりが上方修正された。要因として、長期的な建設コストの上昇、風力発電計画における作業キャンプ費用の追加、ガスタービン供給の遅れ、資本調達コストの引き上げが挙げられる。
AEMOシステム設計担当エグゼクティブゼネラルマネージャーのメリン・ヨーク(Merryn York)氏は「GenCostは、12月に公表予定の統合システム計画案における発電・蓄電コストの基礎資料となります」と説明した。CSIROは、幅広い関係者からの意見を踏まえ、今後も多様な技術の組み合わせによる電力供給の信頼性・柔軟性確保を呼びかけている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部