2025年09月
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アルコール飲料へのがん警告表示を提言 豪ニューサウスウェールズ大学

オーストラリアのニューサウスウェールズ大学(UNSW)は7月30日、飲酒が少なくとも7種類のがんを引き起こすとの科学的証拠を踏まえ、WHOや米国公衆衛生局長官の呼びかけとも一致する形で、アルコール飲料へのがん警告表示義務化を提言した。

UNSW薬物政策モデリングプログラムのクレア・ウィルキンソン(Claire Wilkinson)博士とサラ・クリフォード(Sarah Clifford)博士は、アルコールが乳がん、肝臓がん、大腸がん、食道がんなど少なくとも7種類のがんに直接関与していると指摘する。オーストラリアでは成人の約70%が飲酒しており、がん協会の推計によれば、毎年約5800件(全新規診断の約4%)がアルコールに起因し、肝臓がんの健康被害の39%、乳がんの11%を占めるという。

WHOの技術諮問グループの一員でもあるウィルキンソン博士は、がん警告ラベルが消費者の認識を高め、飲酒行動の見直しを促す効果を強調する。カナダで行われた研究では、がんリスクや標準ドリンク数を明示した赤や黄色のラベルが、消費者の健康リスク認知を向上させ、販売量の減少にもつながったが、業界の反発で撤回された事例がある。クリフォード博士は「最も多く飲酒し、最も高いリスクにある人ほど、ラベルへの接触機会も多くなります」と述べ、情報提供の重要性を訴えた。

現在、アルコール飲料に健康警告を義務付けている国は世界で55カ国にとどまり、そのうちがん関連の警告を行っているのは8%に過ぎない。アイルランドは2026年から全アルコール飲料に「飲酒はがんを引き起こす」と明記する法律を施行予定で、この動きは国際的な先例となっている。

ウィルキンソン博士は「オーストラリアはタバコの無地包装を世界で初めて導入した実績があります。公衆衛生の最前線に立ち続けるべきです」と述べ、政策決定者に行動を促した。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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