2025年09月
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沿岸の砂質堆積物にメタンの主要な発生源を発見 豪モナシュ大学

オーストラリアのモナシュ大学(Monash University)は8月11日、同大学の研究チームが、メタン生成菌の生息に不利と考えられてきた酸素の多い沿岸の砂質堆積物にメタンの主要な発生源があることを明らかにしたと発表した。研究成果は学術誌Nature Geoscienceに掲載された。

モナシュ大学化学部および水研究センターのペラン・クック(Perran Cook)教授と博士候補生のニン・ホール(Ning Hall)氏率いる研究チームは、沿岸環境下で生息する新しい種類の酸素耐性メタン生成菌を特定した。これらの微生物は、酸素存在下で、海藻や海草が分解し放出する化合物を代謝することでメタンを生成する。

研究チームは、オーストラリアのビクトリアにあるポートフィリップ湾やウェスタンポート湾、デンマークでフィールドワークを行い、現場でのモニタリングや室内実験、ゲノム解析を組み合わせて、酸素暴露後の迅速な回復とメタン生成が可能な2つの新しいメタン生成菌を単離した。

同教授は、「これは海洋科学の根本的な仮定に疑問を投げかけます。メタン生成は無酸素環境でのみ起こると考えられていました。私たちは、これらの微生物が酸素曝露に悪影響を受けることなく生き残ることを示しました」と説明した。

この研究では、沿岸の植生と温室効果ガス排出の間のフィードバックループも明らかにした。海藻や海草が分解すると、メタン生成を促進するメチル化合物が放出され、海藻や海草の炭素固定の効果を相殺する可能性がある。この研究は、気候問題の解決策として、沿岸の植生を促進するブルーカーボン戦略をめぐるストーリーを複雑にする。

同教授は、「私たちの発見は、世界の大陸縁辺の半分を占める砂浜が、これまで考えられていたよりもはるかに多くのメタン生成に寄与している可能性を示しています。これは気候モデルと炭素収支に重大な影響を及ぼします」と述べた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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