2025年09月
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環境や地下水管理の高度な分析が可能な新研究施設を開設 豪CSIRO

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は8月21日、アデレードのウェイトキャンパスにおいて総額650万豪ドルを投じ、環境や地下水管理においてこれまでにない高度な分析が可能となる新たな研究施設を開設したと発表した。

CSIROのイオンサイクロトロン共鳴施設は、PFASやマイクロプラスチックなどこれまで検出できなかった化学物質を検知し、高度な化学分析を実施できる
(出典:CSIRO)

新設されたのは、イオンサイクロトロン共鳴(ICR)施設とトリチウム分析(TRIFIN)施設の2つであり、いずれも南半球初となる先端研究拠点である。ICR施設はCSIROが400万豪ドルを投じて設立したもので、世界最強クラスの質量分析装置を備える。ポリフルオロアルキル化合物(PFAS)や医薬品残留物、プラスチック廃棄物、山火事由来の灰など、複雑な環境サンプルを詳細に分析できるのが特徴だ。CSIRO上級研究科学者のロバート・ヤング(Robert Young)博士は「この技術は汚染物質の化学的な指紋を明らかにし、汚染源の特定や修復策の立案に役立ちます」と説明した。さらに土壌中の炭素循環の理解を深め、気候変動緩和策の検討にも貢献するとしている。

一方、TRIFIN施設は250万豪ドルを投じ、CSIROと科学産業基金の支援を受けて設立された。地下水中に微量に存在するトリチウムを検出することで、地下水の年代や涵養速度を把握できる。自動化された手法により従来よりも迅速な測定が可能で、過去50年以内に涵養されたかどうかを高い精度で示すことができる。CSIRO上級主席研究科学者のダーク・マランツ(Dirk Mallants)博士は「地下水はオーストラリアの総水消費量の約30%を支えており、地域社会や産業に不可欠です。この技術により地下水の再生速度を正確に把握し、気候変動の影響に強い資源管理が可能になります」と述べた。

CSIRO環境研究ディレクターのダン・メトカーフ(Dan Metcalfe)博士は「オーストラリアは地球上で最も乾燥した大陸の一つであり、気候変動や汚染の課題が深刻化しています。今回の投資は水資源の安全保障と環境保護を加速する重要な一歩です」と強調した。

今回の投資により、CSIROは環境評価と資源管理における分析能力を飛躍的に強化した。これにより、汚染の早期発見や防止、責任ある産業活動の推進、人間と環境の健康保護が可能となり、持続可能な未来の実現に貢献すると期待される。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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