2025年09月
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量子技術で鉄分を直接測定する新しい血液検査を開発 豪メルボルン大学

オーストラリアのメルボルン大学は8月25日、量子技術を活用した新しい血液検査の開発を進めており、ノーザンテリトリーの先住民コミュニティと協力して実環境でのデータ収集を開始すると発表した。

メルボルン大学のデイビッド・シンプソン(David Simpson)准教授、フローリー神経科学・精神衛生研究所のニコール・ジェンキンス(Nicole Jenkins)博士、ガウェイン・マッコール(Gawain McColl)准教授らが共同設立したFeBIテクノロジーズ社は、鉄分を直接かつ正確に測定できる新しい量子ベースの血液検査を開発している。

従来の血液検査は鉄そのものでは無く、鉄を運搬・貯蔵するフェリチンタンパク質の測定に基づいている。ジェンキンス博士は、鉄分を「水」、フェリチンを「ボトル」に例え、既存技術では容器の数しか分からず、中身の水の量が把握できないと説明する。その結果、特に女性に多い鉄欠乏症などの診断に支障を来し、オーストラリア全体で年間数十億ドル規模の損失につながっているという。FeBIは鉄欠乏症や貧血、鉄過剰症の診断改善に加え、慢性腎臓病や糖尿病など先住民に多い疾患の管理にも役立つと期待される。

オーストラリア政府のクリティカル・テクノロジー・チャレンジ・プログラムは、FeBIの臨床応用可能性を評価し、ノーザンテリトリーのキャサリンで8月に開始されるプロトタイプ開発と先住民参加に49万4000豪ドルを助成した。シンプソン准教授は「10年以上にわたり、ダイヤモンドベースの量子センシング技術に取り組んできました。この技術が、簡単な血液検査で直接、正確に鉄分を評価できる精密診断ツールへと発展していくことをうれしく思います」と語った。

キャサリンでの活動はメルボルン大学のショーン・テイラー(Sean Taylor)教授がサンライズ・ヘルス・サービス・アボリジニ・コーポレーション(Sunrise Health Service Aboriginal Corporation)と連携して進める。サンライズ・ヘルス・サービスのレベッカ・ボンド(Rebecca Bond)CEOは「FeBIは現場での検査の質、迅速性、精度を向上させる可能性があります。既存の方法よりも患者への侵襲性が低いため、患者が鉄分濃度の検査を避けることが少なくなるでしょう」と述べた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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