2025年10月
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ナノプラスチック汚染モニタリングを可能にする光学ふるい開発 豪メルボルン大学

オーストラリアのメルボルン大学(University of Melbourne)は9月9日、同大とドイツのシュトゥットガルト大学(University of Stuttgart)の研究者らが、環境中に存在するナノプラスチック粒子をコスト効率よく、検出、分類、カウントするための新しい光学ふるいを開発したと発表した。研究成果は学術誌Nature Photonicsに掲載された。

マイクロプラスチックは、その危険性が広く認識されている。微小なナノプラスチックは、より潜行性が高く、食品や水、人間の臓器にまで浸透し、その検出は困難で費用がかかる。この研究のオーストラリア側の研究チームを率いたメルボルン大学のルーカス・ヴェゼマン(Lukas Wesemann)博士は、今回のイノベーションは何世紀にもわたって続く可能性のあるナノプラスチック汚染の程度を明らかにし、地球規模の環境と健康危機の大規模なモニタリングに希望を与えると述べた。

同博士は、「これまで、直径1マイクロメートル(100万分の1メートル)未満のプラスチック粒子の検出とサイズ測定は、走査型電子顕微鏡などの高価な装置により行われており、大きな研究所以外で行うことはほぼ不可能でした。そのため、ナノプラスチックの本当の影響を把握することは困難でした。この問題を解決するため、私たちの開発した光学ふるいは、ガリウムヒ素マイクロチップの中にさまざまなサイズの小さな空洞が配列したものが利用されています」と述べた。ナノプラスチックを含む液体をこのふるいにかけると、プラスチック粒子が対応するサイズの空洞に捕捉され、直径200ナノメートルまでのサイズに分類できる。

論文の共著者であるメルボルン大学のブラッド・クラーク(Brad Clarke)准教授は、この汚染モニタリングは手頃な価格で、アクセスしやすく、モバイルにできる可能性があると述べ、「ナノプラスチックの数とサイズ分布を理解することは、地球規模の健康や水圏・地圏生態系への影響を評価する上で、極めて重要です」と指摘した。研究者らは、ナノプラスチックの入った湖水を用いてこの技術を検証し、将来的には血液サンプル中のナノプラスチックの同定試験を考えている。研究者らは今後、このイノベーションが市販の環境試験ソリューションとして拡大させることを模索している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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