オーストラリア国立大学(ANU)は9月11日、同大学の研究者らが参加した研究チームが、2つのブラックホールの衝突から生じたこれまでに見たことのない激しく活発なイベントを詳細に観測したと発表した。研究成果は学術誌Physical Review Lettersに掲載された。

最終的に形成されたより大きなブラックホールが、宇宙の中でまるで宇宙の鐘のように響き渡る様子のイメージ
Credit: LIGO Scientific Collaboration/Sonoma State University/A. Simmonet
(出典:ANU)
研究チームによると、約13億光年離れた場所で起きた2つのブラックホールの衝突により強力な宇宙信号が発生し、研究者らはこれを利用し、1971年にスティーヴン・ホーキング(Stephen Hawking)博士が予測した、ブラックホールは大きくなるだけで縮小することはない、とするブラックホールの熱力学理論を検証することができたという。
2つのブラックホールの衝突は2025年1月14日に検出され、ホーキング博士の仮説が正しいことを示すこれまでで最も有力な証拠が得られた。このブラックホールの衝突の検出は、重力波の初検出から10年目の節目の年であった。重力波は、アルバート・アインシュタイン(Albert Einstein)が100年前に予測し、2015年に初めて観測された。今回検出された重力波は、地球に到達まで約13億年を光速で移動してきた。
最近10年間の装置の改良とデータ解析技術の進歩により、研究者らは2025年1月、ブラックホールの衝突の信号を2015年の検出と比較して3倍の鮮明さで記録することができた。
2015年以降、LVK(LIGO、Virgo、KAGRA)コラボレーションとして知られる重力波探査ネットワークは、約300件のブラックホール衝突と、数件の連星中性子星とブラックホール・中性子星の合体を捉えてきた。科学者たちは現在、約3日に1回のペースでブラックホールの合体を検出している。
論文の共著者であるANUのリン・サン(Ling Sun)博士は、「年間数十件の信号が検出される今、私たちはもはや孤立した音を聞くことはなくなりました。私たちは時空の交響曲を聞き始めています」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部