オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は9月29日、ヒト生体試料とデータを統合的に検索・利用できる国家プラットフォームの整備により、年間約3900万豪ドルの経済的効果が見込まれるとする報告書を発表した。
報告書は、CSIROがNCRISヘルスグループ、ニューサウスウェールズ州保健省(NSW Health)、シドニー大学、Medical Advances Without Animals Trust、クイーンズランド州保健省、ニューサウスウェールズ大学など国内の様々な連携機関と共同で作成したもので、国家研究インフラロードマップへの貢献を目的としている。
同国には200を超えるバイオバンクと400万点以上の生体試料が存在し、生物医学や臨床、公衆衛生、集団健康研究を支える基盤となっている。これらの資源を連携させることで、既存データの活用を高め、人口の多様性を反映した研究や公衆衛生政策の立案に役立つとしている。
CSIRO未来医療・バイオセキュリティ部門のグレッグ・ウィリアムズ(Greg Williams)氏は、「国家レベルでの調整は、サンプルやデータのアクセス時間短縮、既存バイオバンクの利用促進、リスク管理の改善など、多様な利点をもたらします」と述べた。
また、フェノミクス・オーストラリアのマイケル・ドビー(Michael Dobbie)CEOは、「全国のバイオバンクやコホート研究は、研究者の長年の努力と投資、参加者の信頼の成果です。国家的な連携体制は、それらの価値を最大限に引き出す鍵となります」と語った。
さらに、NSW Healthバイオバンキング部長のジェニファー・バーン(Jennifer Byrne)教授は、「例えば希少がんの研究者が複数機関の試料を臨床・ゲノムデータと結びつけて解析できれば、新たな治療指標の発見につながります」と述べた。
報告書では、国家的な連携を推進するため、(1) 全国的なバイオバンク調査の実施、(2) 共通検索・アクセス基盤の構築、(3) ガバナンス体制の整備、(4) 品質管理の統一、(5) 国家運営委員会の設置、の5項目を提言している。CSIRO上級主席研究科学者のベブ・ミュールハウスラー(Bev Muhlhausler)氏は、「今回の報告がバイオバンク間の連携とデジタル環境構築に関する議論の契機となることを期待しています」と述べた。

(出典:CSIRO)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部