オーストラリアのモナシュ大学(Monash University)は10月16日、ヒト腸内に生息する数百種の新規ウイルスを発見し、腸内微生物叢(マイクロバイオーム)の研究に新たなアプローチを示したと発表した。研究成果は学術誌Natureに掲載された。
同大学生物科学学部のジェレミー・J・バー(Jeremy J. Barr)教授と、ハドソン医学研究所のサム・フォスター(Sam Forster)准教授が率いる国際研究チームは、ヒト腸内細菌に存在する数百種類の新しいバクテリオファージを特定した。
これまで腸内ウイルスは、酸素を嫌う細菌の培養が難しく、またウイルスが宿主細菌の中でしか増殖しないため、実験室で扱うことが困難だった。研究チームは今回、酸素を遮断した嫌気性チャンバーを用い、オーストラリア微生物叢培養コレクション(AusMiCC)に由来する252種の腸内細菌を培養した。
チームは、培養した細菌を10種類の化合物、食品、環境条件に曝露し、どの条件でウイルスが活性化するかを検証した。その結果、植物由来の甘味料ステビアと、腸細胞が放出する化合物が、腸内ファージを活性化する主要因であることがわかった。
バー教授は「ヒト腸細胞で生成される化合物が、腸内細菌内の休眠ウイルスを活性化できることを確認しました。これは炎症性腸疾患(IBD)など、炎症や細胞死が頻繁に起こる疾患に影響を与える可能性があります」と述べた。
さらに研究では、ほとんどの腸内バクテリオファージが休眠状態にあり、通常条件では一部しか活性化しないことが確認された。しかしヒト腸細胞に曝露すると活性化率が大幅に上昇し、宿主の生理環境がウイルスの挙動を直接制御していることが明らかになった。筆頭著者のソフィア・ダールマン(Sofia Dahlman)博士は「これまで腸内ウイルスは実験室で扱うことが困難でしたが、ヒト宿主がウイルスの行動に積極的に影響していることがわかりました」と説明した。
研究チームはさらに、CRISPRを用いた遺伝子工学により、ウイルスの活性化を阻害する遺伝子変異を特定した。フォスター准教授は「ウイルスを培養できるようになったことで、腸内マイクロバイオームの機能をより深く解析できるようになります」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部