オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は11月6日、リチウムイオン電池の利用拡大に伴い発火事故が増加していることを受け、家庭内での適切な扱い方や廃棄の注意点をまとめて公表した。

先進的なリチウムイオン電池部品と診断試験装置
リチウムイオン電池は軽量でエネルギー密度が高く、携帯電話、電動工具、電動自転車、家庭用蓄電池、電気自動車など幅広い機器に使われている。同電池は正しく製造・使用されれば安全だが、過充電や物理的損傷、過度の熱、互換性のない充電器の使用などにより火災の危険性が高まるとされる。使い捨てのアルカリ電池と比べ、リチウムイオン電池は構造上リスクを伴う点が特徴だ。
CSIROは発火事例が増えている背景として、市場規模の拡大により流通量が急増したこと、さらに安全基準を満たさない低品質製品がオンラインで購入されやすい状況を挙げる。安価な製品には、サーマルカットオフや難燃性素材などの安全装置が省かれている場合があり、事故につながりやすいと説明している。
家庭でできる対策として、充電中の機器が膨張、過熱、液漏れを起こしていないか確認し、損傷したケーブルや充電器は交換することを推奨している。また、可燃性の高い寝具やカーペットの上で充電せず、不燃性の表面で行うよう求めている。機器内部のバッテリーを改造すると管理システムが損なわれ、安全機能が低下するため避けるべきだとしている。
廃棄については、寿命を迎えた電池を家庭ごみに入れると、収集車やリサイクル施設で火災を引き起こす危険があると警告している。自治体施設やB-cycleの回収地点に設置された専用ボックスに廃棄することが求められる。航空機利用時には、予備バッテリーを機内持ち込み手荷物に入れるべきとし、異常があればすぐに対応できる体制が重要だと説明している。
CSIROは電池材料の開発、安全性評価、電解質設計、バッテリー管理システムの研究を進めており、豪州の気候に適した電池ソリューションの設計や、過酷な条件下での耐性試験、施設・輸送分野に関する火災安全工学研究にも取り組んでいる。

先進的な電池研究の現場:リチウムイオン電池技術や安全性向上のための開発・試験に用いられる実験装置
(出典:いずれもCSIRO)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部