2025年12月
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血糖値の正常化が2型糖尿病発症リスクを半減 豪ディーキン大学

オーストラリアのディーキン大学(Deakin University)は11月13日、同大学の心身医学・臨床応用研究所(IMPACT)が主導する国際研究チームが、前糖尿病状態にある人の血糖値を正常に戻すことで、2型糖尿病の発症リスクを半減できることを明らかにしたと発表した。

オーストラリアの成人の約200万人に影響を与えている前糖尿病は、血糖値が正常より高いものの、糖尿病に分類されるほど高くはない。オーストラリア糖尿病協会(Diabetes Australia)によると、継続的な投資がなければ、2050年までに国内で最大360万人が糖尿病と診断される可能性がある。

現行の臨床ガイドラインは、前糖尿病から2型糖尿病への発症を遅らせることに焦点を当てている傾向がある。同大学院研究員のナジメ・ダヴーディアン(Najmeh Davoodian)博士とモハンマドレザ・モヘッビ(Mohammadreza Mohebbi)准教授は先行研究により、正常な血糖値を回復させるアプローチに関する新たな証拠を見出した。

この研究を基にした同博士の最新研究では、オーストラリア、アジア、米国に居住する8000人の前糖尿病患者を数年間にわたり追跡し、血糖値を正常に回復させることの有効性を検証した。同博士は、「正常な血糖値に戻った人々は、2型糖尿病を発症するリスクが51%低減しました。これは著しい減少であり、2型糖尿病の発症リスクを半減させることが可能であることを明確に示すものです」と述べた。

本研究は、心代謝プロファイル(血圧、コレステロール、体重、ウエストの周囲径の数値)の健全な人々において、その効果がさらに大きいことも明らかにした。例えば、非喫煙者や健康的な体格指数(BMI)を持つ人々は、リスクが最大80~85%低下した。体重を減らし正常な血糖値に戻した人は、体重が増加し前糖尿病状態が続いた人よりもリスクが著しく低かった。

研究者らは、前糖尿病の人々において、健康的な血糖値の回復と関連する健康リスクの管理が、患者ケアにおける明確な目標になるよう医療ガイドラインの更新を求めている。同博士は、「これは警鐘です。前糖尿病を糖尿病への緩やかな進行過程と捉えるのを止め、回復可能なものとして扱うべきです」と述べた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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