オーストラリアのメルボルン大学 (University of Melbourne)は、同大学の研究者が米国航空宇宙局(NASA)や11カ国の科学者とともに、月や火星での長期宇宙探査に向けた植物科学の研究ロードマップを作成したことを発表した。研究成果は学術誌New Phytologistに掲載された。
この研究は、同大学が参加するオーストラリア研究会議「宇宙植物研究卓越センター」(P4S、2024~2030年)の枠組みで進められている。植物が宇宙環境で果たす役割を体系化し、NASAのアルテミス計画と連携しながら、深宇宙探査に向けた植物科学の指針をまとめたものだ。
宇宙では微小重力や自然対流の欠如により、水や栄養の移動、熱や空気の循環が地上とは異なる。このため植物の成長過程にも変化が生じる。研究チームは、こうした環境下で植物がどのように適応するかを明らかにするため、重力の違いに対する反応の解析を進めている。
研究の中では、植物の生命維持機能を評価する「生物再生型生命維持システム(BLSS)準備度レベル」を提案した。これはNASAの作物評価尺度を拡張したもので、植物が空気、水、栄養の循環にどの程度寄与するかを段階的に判断する仕組みである。
NASAは2027年末、アルテミスIIIの一環として月面で3種の植物を栽培する「月面環境が農作物に与える影響(LEAF)」実験を予定している。1週間後に地球へ回収された植物サンプルは、遺伝子発現や放射線、低重力の影響を調べるために分析され、一部はP4Sに所属する大学で解析が行われる。
研究チームはまた、植物の生理情報と人間の感覚的評価を組み合わせた「デジタルツイン」の活用も進めている。オミクス解析と人工知能(AI)を組み合わせ、植物の成長や食品品質の把握を高度化する取り組みである。
同大学は、こうした研究は宇宙での植物栽培に関する理解を深めるために重要だとしている。
(2025年11月27日付発表)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部