オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は、環境DNA(eDNA)を用いて動植物種を特定する国立生物多様性DNAライブラリ(NBDL)を立ち上げ、陸上および海洋生態系の生物多様性をより迅速かつ大規模に監視できる基盤を公開したと発表した。

国立生物多様性DNAライブラリに貢献する分子生物学研究所
NBDLは、eDNAから取得された配列情報を、信頼性の高いDNA参照配列と照合することで、動物や植物の種を識別するための世界初のリソースである。水、土壌、空気などから大量のDNA配列を取得する技術は既に利用可能であったが、それらを正確に種レベルで同定するための包括的な参照ライブラリが不足していたことが、eDNAを活用したモニタリングの制約となっていた。
今回の初期データ公開では、オーストラリアのミンデルー財団の支援を受け、約2500種の海洋魚類のDNA参照配列が整備された。これらは、オーストラリア博物館、クイーンズランド博物館、CSIROが管理するオーストラリア国立魚類コレクションに収蔵された標本に基づいて作成されたもので、オーストラリアに生息する魚類の約半数をカバーしている。CSIROによると、この初期データにより、海水中のeDNAを用いた解析で検出される魚種数が、国内各地で10~40%増加したという。
また、政府機関パークスオーストラリアとの連携により、海洋無脊椎動物や大型藻類、海草に関するDNAデータも公開された。これには、ビクトリア博物館が所蔵するヒトデやナマコなどの標本が含まれる。将来的には、オーストラリアで科学的に命名されているすべての動物および植物に加え、主要な菌類、藻類、害虫種のDNA参照配列がNBDLに収録される予定である。

CSIROでNBDLを統括するジェニー・ジャイルズ(Jenny Giles)博士
(出典:いずれもCSIRO)
CSIROでNBDLを統括するジェニー・ジャイルズ(Jenny Giles)博士は、「NBDLは単なるDNA参照配列の集合ではなく、オーストラリアの生物多様性に関する理解の進展に対応しながら更新される、次世代のモニタリング技術を支える重要な国家インフラです」と説明している。また、NBDLのパートナーであるバイオプラットフォームズ・オーストラリアの広報担当であるサラ・リッチモンド(Sarah Richmond)氏は、「NBDLは検証済みの参照配列を提供することで、eDNAモニタリングの精度と拡張性を高めます」と述べ、プロジェクトの重要性を説明している。
(2025年12月2日付発表)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部