オーストラリアのニューサウスウェールズ大学(UNSW)は1月20日、次世代太陽電池材料として注目されるアンチモンカルコゲナイドを用いた太陽電池で、変換効率10.7%の独立認証値を達成したと発表した。研究成果は学術誌Nature Energyに掲載された。
アンチモンカルコゲナイドは、比較的安価で入手しやすい元素から成る無機材料で、劣化しにくい点が利点とされる。光吸収係数が高く、厚さ300nm(髪の毛の約1000分の1)程度の薄い層でも太陽光を効率的に集めることができるほか、低温で成膜できるため製造時のエネルギー消費を抑え、大規模・低コスト生産につながる可能性がある。UNSWでは、シリコン太陽電池の上に別材料のセルを重ねるタンデム型太陽電池のトップセル候補の1つとして有望だとしている。
ただし同材料の効率は2020年以降10%を超えられず停滞していた。研究チームは、水熱堆積で作製する際に硫黄とセレンの分布が不均一になり、電荷の移動を妨げるエネルギー障壁が生じることが主因だと突き止めた。筆頭著者のチェン・チアン(Chen Qian)博士は元素分布を均一化することで電荷が捕捉されにくくなり、発電効率が高まると語る。元素分布の不均一という課題解決のため、製造工程で少量の硫化ナトリウムを加え、光吸収層を形成する化学反応を安定化させた。改良セルは研究室内で電力変換効率11.02%を示し、太陽光発電測定センターの1つであるオーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は10.7%を独立認証した。
この結果により、アンチモンカルコゲナイドが国際的なSolar Cell Efficiency Tablesに初めて掲載されることとなった。今後は、不動態化などで欠陥を減らし、近い将来に電力変換効率12%まで高める目標を掲げる。さらに、半透明で両面受光性(両面受光率0.86)が高い特性を生かし、シースルーの太陽光窓や、オーストラリアのシドニー・ソーラー(Sydney Solar)社の窓向け「ステッカー型」太陽電池への応用も想定している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部