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心臓発作後にヒトの心筋細胞が再生することを世界で初めて確認 豪シドニー大学

オーストラリアのシドニー大学(University of Sydney)は1月20日、研究者らが心臓発作後のヒトの心臓で新しい心筋細胞が生み出されていることを世界で初めて確認したと発表した。研究成果は学術誌Circulation Researchに掲載された。

(出典:シドニー大学)

心臓発作では多くの心筋細胞が死滅し、一度損なわれた心臓の機能は回復しないと考えられてきた。今回の研究では、発作後の心臓が傷跡を形成しながらも、新たな心筋細胞を生み出していることが示された。これにより、心臓が持つ自然な再生能力を治療に生かせる可能性が生まれた。

研究チームは、シドニーのロイヤル・プリンス・アルフレッド病院で心臓バイパス手術を受ける患者から、同意を得た上で生体の心臓組織を採取した。病変部と非病変部の組織を比較解析することで、細胞分裂(有糸分裂)が起きていることを確認した。マウスでは同様の現象が知られていたが、ヒトで直接示されたのは初めてである。

心血管疾患は世界的に主要な死因で、オーストラリアでも死亡全体の約24%を占める。心臓発作では心筋細胞の3分の1が失われる可能性があり、過去10年間で治療法の進歩により生存率が劇的に向上したが、多くの患者が心不全に進行する。国内には約14万4000人の心不全患者がいる一方、年間の心臓移植は約115件にとどまっており、患者のニーズと治療可能数の間に大きな格差が生じている。

今回の研究で、生体組織サンプルを採取する技術の開発により、ヒトの心臓を再生する新たな治療法の開発への活用が期待される実験モデルを構築することができた。同大学医学部のショーン・ラル(Sean Lal)教授は、この発見をもとに心不全を改善する新たな治療法につなげたいと語る。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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