オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は1月29日、CSIROの研究者らを含む国際研究チームが量子電池を用いて量子コンピューターに電力を供給する新しいアーキテクチャを理論的に示したと発表した。研究成果は学術誌Physical Review Xに掲載された。

量子コンピューターを量子電池で充電する方法を示す図
量子コンピューターは量子物理学の原理を利用し、従来の計算機では困難な問題を解決できる技術として期待されている。一方で、量子状態を維持するためには極低温環境が必要であり、大規模な冷却装置や多数の配線、室温電子機器を伴うことから、エネルギー消費とインフラの複雑さが実用化と大規模化の大きな障壁となってきた。
本研究では、CSIRO、オーストラリアのクイーンズランド大学、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究チームが、光によって充電可能な量子電池を量子コンピューター内部に組み込む構想を理論的に検討した。量子電池は装置内部の構成要素とエンタングルメントによって結合し、システム内のエネルギーを再利用できるとされる。これにより外部からの電力供給や冷却負荷を低減できる可能性がある。
理論モデルの解析から、この量子電池駆動方式を用いることで、同じ物理的空間内に配置できる量子ビット(キュービット)の数を最大4倍に増やせることが示された。また、発生する熱量の低減や配線数の削減に加え、量子ビット数の増加に伴って計算速度が向上する量子超拡張性と呼ばれる効果による性能向上も示唆された。
論文の共著者でCSIROの量子電池研究を率いるジェームズ・クアック(James Quach)博士は、量子電池は小型ながら強力で、エネルギーや冷却、インフラの課題解決に近づく成果で、量子コンピューターが動作する間に内部で充電される専用の燃料タンクを持つようなものだと説明した。研究チームは今後、この理論を実験的に検証する実証研究に取り組む予定としている。

CSIROの量子電池チームを率いるジェームズ・クアック(James Quach)博士
(出典:いずれもCSIRO)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部