オーストラリアのモナシュ大学(Monash University)は1月28日、研究者らがわずか3nm厚の超薄金属膜において、これまで実現が困難とされてきた3次元フラットバンド状態を観測したと発表した。研究成果は学術誌Advanced Materialsに掲載された。
フラットバンドは、電子の運動性がほぼ失われ、電子間相互作用が支配的となる特異な電子状態であり、非従来型超伝導や異常磁性などの発現と関係する電子状態のことだ。これまで3次元フラットバンドは、特殊な結晶構造を持つ一部のバルク材料でのみ報告されており、極薄膜での実現は難しいと考えられてきた。
本研究で対象としたのは、磁性を持つカゴメ格子構造の金属Mn3Snである。研究チームは分子線エピタキシー法を用い、原子レベルで制御された高品質な単結晶薄膜を作製した。厚さは約3nmと極めて薄いにもかかわらず、運動量空間全体にわたる3次元フラットバンドが形成されていることを明らかにした。
状態の解析には、光子エネルギー依存の角度分解光電子分光法を用い、運動量空間の3方向すべてにおけるバンド分散を測定した。さらに、走査トンネル顕微鏡・分光法により、カゴメ格子に特徴的な角共有三角形上で電子が局在していることを確認した。これらの結果は理論モデルとも一致した。
解析の結果、3次元フラットバンドは、Mn3Snが本来持つ強い電子相関と、超薄膜化による量子閉じ込め効果が相乗的に働くことで生じることが示された。量子閉じ込めは面外方向の運動を抑えるだけでなく、面内のフラットバンド特性を強化し、バルク材料よりも顕著な平坦性をもたらすという。
本成果は、ねじれや積層、あるいは複雑な人工構造に依存せず、材料固有の性質と薄膜工学を組み合わせることで3次元フラットバンドを設計できることを示した。強相関量子相やトポロジカル量子状態の制御、低エネルギー電子デバイスへの応用に向けた新たな基盤となる成果である。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部