オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は2月5日、インドでの発生を受けて再び注目されているニパウイルスについて、同ウイルスおよび関連するコウモリ媒介性ウイルスの研究を進め、感染拡大への備えと世界的な疾病監視の強化に取り組んでいると発表した。

ニパウイルスに感染したVero細胞。ニパウイルス感染に典型的な細胞融合(合胞体形成)を示している
ニパウイルスは1998年に初めて特定された高病原性の人獣共通感染症ウイルスで、重篤な呼吸器疾患や致死的な脳炎を引き起こすことがある。致死率が高く、承認済みのワクチンや治療法はないとされる。一方で人から人への感染は限定的で、空気感染は確認されていない。流行は主にインドとバングラデシュでほぼ毎年発生しており、今回のインドでの発生は新たな変異株によるものではないという。
感染は、フルーツコウモリや感染した中間宿主の唾液や尿などへの接触、汚染されたナツメヤシ樹液の摂取を通じて起こる。また、感染者との密接な接触や体液への曝露によって人から人へ広がる場合もある。オーストラリアではこれまで発生例はなく、今回の流行が国内の人や動物に影響を及ぼす可能性は極めて低いとしている。
CSIROは、高度封じ込め施設であるオーストラリア疾病対策センター(ACDP)において、診断法の開発、ウイルスの特性解明、試験モデルの構築、ワクチンや治療薬候補の初期段階研究、国内外での現地監視などを実施している。ニパウイルスの研究はバイオセーフティーレベル4の施設で行われ、研究者は完全密閉型の防護服を着用するなど厳格な安全管理の下で作業している。
サラ・エドワーズ(Sarah Edwards)博士は「ニパウイルスは高い致死率と承認済みの治療法やワクチンがないことから、最も危険な新興感染症の一つと考えられています」と説明している。

CSIROの動物由来病原体およびモデル研究グループを率いるサラ・エドワーズ(Sarah Edwards)博士
(出典:いずれもCSIRO)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部