オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は2月9日、先住民女性が設立したパール・ナチュラル・プロダクツ(Paaru Natural Products)社とKick-Startプログラムを通じて協働し、伝統的な薬用植物の知識を拡張可能な製造プロセスへ転換したと発表した。

CSIRO生物活性天然物研究所を訪問したパール創設者のデブ・エヴァンス氏(左)
同社はニューサウスウェールズ州の遠隔地域で創業され、マリャンガパ/バルカンジ(先住民コミュニティ)出身の3人の女性が母系家族から受け継いだ薬用植物の知識を基盤としている。土地を守り、物語や神聖な知識を保護する文化的責任を果たしながら、経済的自立の強化を目指している。
商業的に拡張可能な製品化に向け、同社は現代製造に適した抽出方法の最適化、先住民文化・知的財産(ICIP)を保護できる協力体制、文化的完全性を損なわずに伝統的知識を科学的手法へ翻訳する能力、さらに遠隔地で低技術機器により実施可能で簡素な工程を求めた。CSIROはICIP条項を設け、文化的知識の所有権と権限が同社にあることを保証し、植物の特定情報も研究チーム内で機密扱いとした。

CSIROの上級実験科学者イヴァン・マルティネス=ボテラ(Ivan Martinez-Botella)氏(中)と研究チームメンバーら
(出典:いずれもCSIRO)
研究では溶媒や乾燥技術、植物部位の違いを検討し、品質と一貫性を高めた抽出工程を確立した。創設者のアンティ・デブ・エバンス(Aunty Deb Evans)氏は「CSIROが文化知識と知的財産に対応できる機関であると分かっていたことが、私たちが関与できた鍵です」と述べ、「このプロジェクトによりプロセス効率は6倍向上しました」と説明した。CSIROの上級実験科学者イヴァン・マルティネス=ボテラ(Ivan Martinez-Botella)氏は「神聖な知識を託されたことは光栄であり、先住民科学と西洋科学を融合させて具体的な成果を生み出すことができました」と語った。新工程はより安定した抽出物を生み出し、2026年に予定される同社初の製品ラインに使用される計画である。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部