オーストラリアのニューサウスウェールズ大学(UNSW)は3月5日、米国のアリゾナ州立大学との国際共同研究として、人工知能(AI)と金属3Dプリントを組み合わせ、航空宇宙や防衛分野で用いる高温、高圧に強く、3Dプリントにも適した耐火合金材料の開発を進めていると発表した。
耐火合金は、タングステン、ニオブ、モリブデンなど融点の高い元素を主成分とし、極端な高温や応力、放射線にさらされても強度を保ちやすい材料だ。だが、現在広く使われている耐火合金の多くは数十年前に設計されたもので、鋳造や鍛造には適していても、レーザーで金属粉末を繰り返し溶融、凝固させる3Dプリントでは、割れや反り、内部欠陥が生じやすい。このため、航空機や宇宙機、艦艇向けの新規部品製造や交換部品供給を3Dプリントで実現するのは困難である。
研究チームはこの課題に対し、囲碁やチェスの学習にも使われる強化学習を用いて、新しい合金組成を探索している。AIは、1000℃を超える温度での強度、高温酸化への耐性、重量、コスト、さらに3Dプリントのしやすさを同時に評価し、有望な候補を選び出す。選ばれた合金は実験室で実際に3Dプリントし、性能評価の結果をAIへ戻すことで、次の予測精度を高める仕組みだ。
この方法により、次世代エンジン、極超音速機、耐熱防護システム向け材料の開発加速が期待される。この手法で設計され3Dプリントされた米航空宇宙局(NASA)のGRX-810合金は、従来合金に比べ高温での耐久性を1000倍に高めることに成功している。また、従来の耐火金属加工では原材料の最大95%が無駄になるのに対し、3Dプリントでは廃棄を大きく減らせる可能性がある。
一方で、耐火合金の実験データ不足、3Dプリント向け粉末の高コストと調達の難しさ、大型部品へのスケールアップの難しさなどが課題として残る。研究はまだ初期段階で、現在はAIモデルと学習用の実験データベースを整備している。今年後半には最初の候補合金を選び、3Dプリントと実験室試験を始める予定だ。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部