オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は3月10日、インド理科大学院(IISc)との共同研究で、製鉄時に使う石炭の一部を農業廃棄物に置き換え、商業規模で安定稼働できることを世界で初めて実証したと発表した。
鉄鋼生産は世界の二酸化炭素排出量の約10%を占める主要な排出源であり、特にインドの鉄鋼部門は世界で最も成長が速い分野の1つとされる。インドの鉄鋼生産は1t当たり平均2.55tのCO2を排出し、世界平均の1.8tを上回る。2030年までに生産能力は3億t、2047年までに5億tへ拡大する見通しで、石炭依存の製法や小規模なロータリーキルン型の直接還元鉄(DRI)設備が排出増加の要因となっている。
研究チームは、インドのオディシャ州のジンダル・スチール(Jindal Steel)社の商業製鉄所で、地元調達したもみ殻ペレットをガス化炉に混合する大規模試験を実施した。5%と10%の比率でもみ殻ペレットを投入した結果、性能を落とすことなく、鉄鉱石還元に必要なバイオマス由来の合成ガス(シンガス)を安定して生産できた。農業残渣を石炭代替に使うことで、粗鋼1t当たり最大約1.19tのCO2削減が見込まれるという。

ジンダル・スチール(Jindal Steel)社の製鉄所

地元調達したもみ殻ペレット
(出典:いずれもCSIRO)
インド全体でこの手法が採用されれば、鉄鋼部門の排出量を最大50%削減でき、年間約3億5700万tのCO2削減につながる可能性がある。インドでは余剰の農業残渣バイオマスが2億2852万tあるとされ、研究チームは製鉄インフラと地域別のバイオマス供給量を重ねたオンライン地図も公開し、新技術の導入促進を狙う。
今後は、より小規模な地域製鉄所への展開や、より多様なバイオマス資源の活用、食料と製鉄原料を同時に生産する統合型システムの検討を進める。CSIROのウォーレン・フレンチェ(Warren Flentje)上級実験科学者は、農業廃棄物を使って製鉄を大規模に脱炭素化できることを示した世界初の実証だと述べ、キース・バイニング(Keith Vining)研究グループリーダーは、次段階ではバイオマス置換率の引き上げと直接還元工程への影響評価に取り組むとした。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部