オーストラリアのニューサウスウェールズ大学(UNSW)は3月11日、体外受精(IVF)などの不妊治療を受けたオーストラリア人女性では、全体的ながん発生率の上昇とは関連していないが、一部のがんでは違いが見られたという研究結果を発表した。研究成果は学術誌JAMA Network Openに掲載された。
研究チームは、1991年から2018年に生殖補助医療を受けたオーストラリア人女性41万7984人の健康記録とがん登録データを分析した。対象にはIVF、子宮内人工授精、不妊治療薬クロミフェンによる治療が含まれ、平均10年間にわたるがん発生状況を、同年齢かつ同時期の一般女性集団と比較した。
その結果、全体の浸潤がん発生率は一般女性と比べて高くなかった。一方、がん種別にみると、子宮がん、卵巣がん、悪性黒色腫はやや多くみられ、IVFを受けた女性では非浸潤性乳がんも多かったが、浸潤性乳がんの増加は確認されなかった。逆に、子宮頸がんと肺がんの発生率は低かった。相対リスクでは、子宮がんは治療法によって23%~83%、卵巣がんは18%~23%、悪性黒色腫は7%~15%高かった一方、子宮頸がんは約40%、肺がんは約30%低かった。
ただし、実際の症例数の差は小さく、発生率が高かったがんでも増加は女性10万人当たり年間3~7例にとどまった。研究チームは、こうした差は治療そのものの影響を直ちに示すものではなく、不妊の背景要因や生活習慣、居住地、社会経済状況、喫煙状況、がん検診受診状況など複数の要因を考慮する必要があると指摘した。特に不妊症の原因となる子宮内膜症や多嚢胞性卵巣症候群は、子宮がんや卵巣がんのリスクを高めることが知られている。
共同筆頭著者のエイドリアン・ウォーカー(Adrian Walker)博士は、この研究は集団間の発生率を比較したものであり、不妊治療自体ががんを引き起こすかどうかを示すものではないと強調した。研究チームは、追跡終了時点で比較的若い女性が多かったことから、今後さらに長期の追跡調査が必要だとしている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部