2026年05月
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水滞留を抑える新設計で水素燃料電池の効率大幅向上 商用化に前進 豪UNSW

オーストラリアのニューサウスウェールズ大学(UNSW)は4月8日、同大学の研究者らが水素燃料電池における水の滞留による性能低下という課題を解決する新たな設計を開発し、効率を大幅に向上させるとともに商用化への道を開いたと発表した。研究成果は学術誌Applied Catalysis B: Environment and Energyに掲載された。

水素燃料電池はグリーン水素を燃料とし、水のみを副生成物とするクリーンエネルギー技術であるが、商用化は困難であった。セル内部で生成された水が滞留し、酸素の流れを妨げて性能を低下させることが主な要因であり、従来はこれを解消するために複雑でエネルギー消費の大きい装置が必要であった。

UNSW化学科のクエンティン・メイヤー(Quentin Meyer)博士およびチャオ・チュアン(Chuan Zhao)教授らを中心とする研究チームは燃料電池の内部構造を見直し、幅100µmの微細流路と同間隔のマイクロリブを導入した。この構造により、水やガスが蓄積する前に排出される「横方向バイパス」が形成され、水の滞留を防ぐことが可能となった。その結果、再設計された燃料電池は従来比で75%高い出力を達成した。

メイヤー博士は「水素燃料電池はクリーンで効率的なエネルギー源ですが、実用化には課題がありました。今回の設計はわずかな構造変更で性能を大きく改善できます」と述べた。チャオ教授は「この技術はさまざまな用途に適用可能であり、水素エネルギーの利用を現実のものに近づけます」と述べた。

さらに本設計は白金など高価な金属への依存を低減し、軽量化と低コスト化にも寄与する。研究チームは航空や貨物輸送分野での応用を見据え、特に低高度航空機での利用を想定している。関連技術は特許化されており、今後は実用化に向けたスケールアップが進められる。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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